高尿酸血症(痛風)
高尿酸血症とは、尿酸値が7mg/dl以上の状態をいいます。高尿酸血症には、腎臓における尿酸排泄が低下した「尿酸排泄低下型」、腎臓に対する尿酸負荷が増大し血清尿酸値の上昇をおこす「腎負荷型」、そしてこれらの「混合型」の3つのタイプがあり、さらに腎負荷型には「尿酸産生過剰型」と腸管からの尿酸排泄が低下した「腎外排泄低下型」の2つがあります。日本人は腎臓からの尿酸排泄低下型が多いとされています。女性ホルモンには腎臓からの尿酸の排泄を促す作用があるため高尿酸血症は男性に多く、男女比は約10対1と明らかな性差が認められます。また、遺伝的な要因の影響もありますが、生活習慣などの環境的要因の方が強く影響すると考えられており、明治時代初期の日本では痛風患者はほとんどみられなかったのに対し、近年では、高尿酸血症は成人男性の30%前後、痛風は成人男性の1~1.5%程度でみられます。
血中の尿酸値が長期間にわたって通常の基準値である8㎎/dlを超える状態が続くと、尿酸塩の結晶が体内にたまり、足の第1中足趾節関節(親ゆびの付け根)、肘関節、耳介などに痛風結節が現れ、さらに激痛を伴う痛風発作などを起こします。また、尿路結石、腎結石、そして腎機能障害(痛風腎)の原因にもなります。
その他に、高尿酸血症はメタボリックシンドロームや高血圧などとも関連すると考えられています。その結果、高尿酸血症は動脈硬化を引き起こし心筋梗塞などの発症のリスクとなり得ます。
血中の尿酸は主にプリン体から生成され、プリン体の約80%は体内で生成され、残りの約20%は食事から摂取されます。そもそもプリン体とは、細胞の核に存在する核酸の主成分であるアデニンやグアニンなどと呼ばれ、あらゆる生物の細胞内に存在し、ほとんどの食品に含まれています。食べ物から取り込まれるプリン体のほかにも、からだの新陳代謝によって古い核酸が分解され、エネルギーがつくられる過程でもプリン体が生成されます。このようにプリン体は生き物の体内で重要な役割を担いますが、多すぎると分解されて最終的に尿酸に代謝されます。
尿酸値をさげるためにはプリン体の多いレバーや赤身魚などの食品やアルコール(特にビール)などを控える食事療法や、体重の減量、尿酸値を下げるための薬物療法が重要です。
痛風発作について
血中の尿酸値が高い状態が慢性化すると、第1中足趾節関節やくるぶし、足首、足の甲、膝関節、手首、肘関節に尿酸の結晶が溜まり、激痛を伴う炎症が起こります。これが痛風発作です。“風が吹いても痛い”激痛であったことが語源といわれております。
第1中足趾節関節で起こることがほとんどで、赤く腫れて激しい痛みが起こります。また、足の甲、足首、膝、手首などで症状が起こる場合もあります。特に、脱水状態になると痛風発作が起こるリスクが高まるため、夏の暑い時期は十分な水分補給を心がけて発作を防ぎましょう。また、気温が低くても尿酸結晶ができやすくなるため、冬も注意が必要です。
治療は、消炎鎮痛薬(ロキソニンなど)を使って腫れや痛みを解消することを目指します。症状が落ち着いたら、痛風の再発防止のために尿酸値を下げるお薬を服用して頂きます。
プリン体を多く含む食品とお酒
肉類や魚介類を好んで摂る方、お酒を習慣的に飲む方は、通常よりも多くのプリン体を摂取しやすい傾向があります。特に、レバー、赤身魚、エビ、イカ、タコ、白子、干物、干しシイタケなどの食品には多くのプリン体が含まれているため、過度な摂取に注意が必要です。さらに、一部の健康食品にもプリン体が含まれていることに注意が必要です。ビール酵母、クロレラ、ローヤルゼリーなどが該当します。お酒についても、蒸留酒よりも醸造酒(例:日本酒、ビール、ワイン)に多くのプリン体が含まれています。
飲酒習慣のある人は、飲酒の頻度が低い人々と比べて痛風発作のリスクが2倍に増加するとも言われており、飲酒はできる限り抑えることが重要です。
高尿酸血症の治療
尿酸値9mg/dl以上であれば、生活指導や薬物療法による治療を開始しますが、腎障害・高血圧・糖尿病・肥満などの合併症を伴うものについては8mg/dl以上から食事療法や運動療法、薬物療法といった治療を開始します。また、痛風発作歴があるものは尿酸値7.0mg/dl以上から治療を開始し、いずれも6mg/dl以下を目指します。薬物療法は、尿酸産生抑制薬や尿酸排泄抑制薬を使って行いますが、急激に尿酸値を下げると痛風発作が起こりやすくなるため、3~6ヶ月程度かけて少しずつ尿酸値を下げるようにコントロールします。
生活習慣
BMI(体重÷身長の2乗で算出される肥満指数)が25を超える肥満体質の方は、痛風発作が起こりやすいため、ダイエットに取り組みましょう。なお、運動療法では医師の指示をしっかりとお守りください。運動は生活習慣を改善し、肥満防止のために良いですが、無酸素運動のような短時間での過度な運動は、かえって尿酸値を上昇させるため、高尿酸血症の方には好ましくありません。
また、しっかりと水分補給をして排尿量を増やすことも有効です。
食事
プリン体の摂取量を1日に400mg未満に抑えることが重要です。肉(特にレバー)や赤身魚、エビ、イカ、タコ、白子、干物には多くのプリン体が含まれているため、これらの食品を過度に摂取しないように注意しましょう。
また、お酒(特に醸造酒)にもプリン体が多く含まれていますので、日本酒を摂取する場合は1合未満、ビールを飲む場合は500ml未満が目安です。飲酒量の管理もプリン体の摂取に影響を与えることから、注意が必要です。