予防接種について
予防接種とは、各種ワクチンを接種することで免疫を獲得し、感染症の発症を予防するための効果的な方法です。発症を予防する効果は100%ではありませんが、体内に病原体が侵入して病気にかかってしまったとしても、感染症の重症化を防ぐ効果などもあります。
ワクチン接種を受けたことのない方や迷われている方も、お気軽にご相談ください。
なお、インフルエンザなどの一部のワクチンを除いて、ほとんどのワクチンは予約を受けてからの発注になりますので、予約当日の接種が困難となります。必ず事前にご予約をお願いいたします。
当院では15歳未満の方の予防接種は受け付けておりませんのでご了承ください。
予防接種の種類
成人用肺炎球菌ワクチン
肺炎は横浜市や全国において死因の上位であり、そのうち1/4から1/3は肺炎球菌によるものと考えられています。成人用肺炎球菌ワクチン予防接種は、令和5年度まで65歳以上の5歳刻みの対象年齢に該当するワクチン未接種者に対して実施されていましたが、令和6年度より下記の対象に変わりました。
- 対象者1:65歳の方
- 対象者2:60~64歳で、心臓や腎臓、呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活を極度に制限される方
- 対象者3:60~64歳で、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方
接種に必要なもの
- 予診票(横浜市より送られてきます)
- 住所・氏名・年齢を確認できるもの(健康保険証、運転免許証など)
※60歳以上65歳未満の方は、身体障害者手帳や診断書、また障害の程度が確認できるもの - 接種費用3,000円 ※1、※2
詳細は横浜市のHPをご確認ください。
- ご本人を含む同じ世帯にいる方全員が市民税非課税の方
- 生活保護を受けている方(保護基準の見直しにより保護廃止となった方を含む)
- 中国残留邦人等の方で、支援給付を受けている方
- 接種回数が2回以上の方。接種後5年の間隔を開けて受けるようお願いいたします。
- 対象の年齢、または実施期間以外の方
帯状疱疹ワクチン
帯状疱疹は、水痘(水ぼうそう)と同じ水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が、体の中で再活性化することで発症します。日本人成人の90%以上は、帯状疱疹の原因となるウイルスがすでに体内に潜んでいるといわれ、過労やストレスなどで免疫力が低下するとウイルスが活性化して帯状疱疹を発症します。50歳以上になると帯状疱疹の発症が増加し始め、80歳までに約3人に1人が発症すると推定されています。そのため、50歳以上の方は、帯状疱疹の発症を防ぐためワクチン接種が推奨されています。
過去に水痘を発症したことがある方は特に、体内に帯状疱疹ウイルスがいる可能性があるため、免疫力が落ちると帯状疱疹を発症する恐れがあります。
帯状疱疹は、胸部、腹部または顔面にピリピリ・チクチクとした痛みやかゆみを伴う帯状の発疹や水泡が現れ、しばしば灼熱感、または刺すような痛みを伴うこともあります。帯状疱疹の合併症として、帯状疱疹後神経痛(PHN)という発疹が消失した後も数カ月間続く痛みがあり、帯状疱疹患者の約20%で起こります。高齢者の患者さんほどPHNになりやすいといわれています。ちなみに帯状疱疹に一度なった方の再発率は数%ですが50歳以上の女性に多いといわれ、再発する場合は前回とは異なる場所がほとんどといわれています。
帯状疱疹の予防にはワクチン接種が有効であり、50歳以上の方、または18歳以上で帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる方は、任意接種として受けることができます。
帯状疱疹ワクチンとして、2016年に認可された「弱毒生水痘ワクチン」と2020年に認可された不活化ワクチンである「シングリックス®」の2種類があります。日本では、一部の地方自治体で公費助成が実施されていますが、現在、横浜市では全額自己負担となります。
名称 | 乾燥弱毒生水痘ワクチン 「ビケン」 |
乾燥組換え帯状疱疹ワクチン 「シングリックス®筋注用」 |
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種類 | 生ワクチン | 不活性化ワクチン | |
効能 | 水痘・帯状疱疹の予防 | 帯状疱疹の予防 | |
効果 | 発症予防 | 約50~60% | 約90~98% |
神経痛 予防効果 | 66.5%軽減 | 85.5~100%軽減 | |
持続性 | 5年程度 | 10年後でも80%以上持続 | |
接種対象者 | 50歳以上の方 | 50歳以上の方 または 帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の方 |
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接種方法 | 皮下注射 | 筋肉内注射 | |
接種回数 | 1回 | 2カ月間隔をあけて2回 | |
価格 | 8,800円(税込) | 22,000円(税込)/1回 | |
帯状疱疹ワクチンは横浜市では全額自己負担となります。 |
横浜市風しん対策事業(妊娠を希望する女性などの風しん予防接種と抗体検査)
風しんウイルスに感染すると、約2~3週間の潜伏期間の後、発しん、発熱、首のうしろのリンパ節が腫れるなどの症状が現れます。また、せき、鼻汁、目が赤くなる(眼球結膜の充血)などの症状が見られることもあります。
妊娠中の女性が風しんに感染すると、お腹の赤ちゃんにも感染し、耳が聞こえにくい、目が見えにくい、心臓に異常があるといった「先天性風しん症候群」になる可能性があります。
横浜市では風しんの流行と「先天性風しん症候群」の発生を防止するため、「横浜市風しん対策事業」として風しんの予防接種と抗体検査を実施しています。
費用
予防接種 | 麻しん風しん混合ワクチン 3,300円(税込) |
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抗体検査 | 風しん抗体検査(血液検査、HI法) 無料 |
※最初からワクチンを接種するか、抗体検査後にワクチンを接種するか、どちらか選べます。風しん抗体検査を行った場合、抗体価がHI法で16倍以下だった時にワクチン接種が推奨されます。
対象
この事業を利用したことがない中学1年生以上の横浜市民で、
- 妊娠を希望している女性(妊娠中は接種できません)
- 妊娠を希望している女性のパートナー及び同居家族(婚姻関係は問いません)
- 妊婦のパートナー及び同居家族(婚姻関係は問いません)
※1 「麻しん風しん混合(MR)ワクチン」、「風しん単独ワクチン」又は「麻しん・風しん・ムンプス(おたふくかぜ)混合(MMR)」の接種歴が合計2回以上ある方は対象となりません。
※2 横浜市風しん対策事業のご利用は一度限りです。
(平成27年度以降に風しん対策事業を利用した後、再度の利用はできません。)
※3 妊娠中は接種できません。また、パートナーとの婚姻関係は問いません。
※4 未成年者の場合は、原則として保護者の同伴をお願いします。
予約される際は横浜市風しん対策事業をご利用の旨、お伝えください。
受診日当日は、住所・氏名・年齢を確認できるものをお持ちください(健康保険証、運転免許証など)
横浜市風しん追加対策事業(第5期予防接種)
平成30年7月以降、関東地方で30代~50代の男性を中心に風しんが流行したため、過去に予防接種を受ける機会がなかった昭和37年4月2日から昭和54年4月1日までに生まれた男性を風しん対策第5期の対象者として、風しん抗体検査及び予防接種を実施できるクーポン券を送付しており、横浜市でも行っております。令和7年3月31日までの実施期間となっております。
- クーポン券が届いたら、風しん抗体検査を受けてください。
- 十分な風しん抗体価があれば予防接種の必要はありません。抗体価が少ない方(HI法 8倍以下)は、 麻しん風しん混合(MR)ワクチンの予防接種を実施します。
費用
- 無料:クーポンがあれば抗体検査、予防接種いずれも国の補助対象となります。
持参するもの
- クーポン券
- 抗体検査受診票
- 住所・氏名・年齢を確認できるもの(運転免許証や健康保険証など)
(①及び②は横浜市から送付しますので、お手元にない場合はお問合せください。)
クーポンがない場合自費となります。
風疹抗体検査(HI法) | 3,300円(税込) |
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麻疹抗体検査(EIA法) | 4,400円(税込) |
MRワクチン予防接種 | 11,000円(税込) |
子宮頸がん予防接種
子宮頸がんは、若い女性が発症するがんの中で大きな割合を占めます。日本では毎年、約1.1万人の女性がかかる病気で、患者さんは20歳代から増え始めて、30代までにがんの治療で妊娠できなくなってしまう人は毎年約1,000人います。また、高齢者も含めて毎年、約2,900人の女性が亡くなっています。子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染により子宮けい部に異形成(がんになる前の状態)を生じ、その後進行して、がんに至ります。HPV感染後、多くは数年以内にウイルスが消失しますが、一部の人で感染状態が継続し、数年から数十年かけて子宮頸がんに進行します。
子宮頸がんワクチン(2価(サーバリックス)、4価(ガーダシル))は、子宮頸がんをおこしやすいHPV16型と18型の感染を防ぐことで、子宮頸がん発症の50~70%を防ぎます。また、9価ワクチン(シルガード9)は、16型と18型に加え、さらに5種類のHPVの感染も防ぐため、子宮頸がん発祥の80~90%を防ぐといわれています。子宮頸がん予防接種を1万人が受けると、受けなかった人に比べ、約70人の子宮がん発症を減らし、約20人の命が助かると考えられています。
対象者
- 小学校6年から高校1年生相当の女子
- 令和7年3月31日まで実施中の救済措置(キャッチアップ接種)の対象者(1997年4月2日~2008年4月1日生まれの方)も無料で接種することができます。
※当院では15歳以上の方のみ予防接種を行っております。
18歳未満の方の予防接種は、保護者同伴が原則です。
ただし、次に該当する方でやむを得ず保護者が同伴できないときは、横浜市のホームページや厚生労働省作成のリーフレットをお読みいただき、十分ご理解いただいた上で、保護者が署名をした「予診票」及び「接種同意書」をお持ち下さい。
- 接種を受ける方が13歳以上。
- 保護者が接種について十分理解しており、以下の項目を満たしていること。
- 保護者がワクチンを選択し、予診票右上の選択欄(2価、4価又は9価)を○で記している。
- 保護者が予診票の質問項目に回答している。
- 予診票と同意書(子宮頸がん予防ワクチン予防接種同意書(PDF:185KB))の保護者自署欄に署名している。
費用
対象者は無料
ワクチン接種回数および間隔
厚生労働省HPより転載
2価(サーバリックス)又は4価ワクチン(ガーダシル)を既に1回目又は2回目まで接種済みの方へ
原則として同じ種類のワクチンで接種を完了することが推奨されています。
※ただし、3回接種のうち1回目又は2回目までを2価又は4価で接種されている方が、9価で残りの回数を接種すること(交互接種)については、効果やリスクなどのデータが限られていますが、強く希望される場合は、医師とよく相談した上で実施することとされています。
交互接種の場合の接種回数は対象年齢にかかわらず3回です。
接種間隔は、2回目の接種は初回接種から最低1か月以上、3回目の接種は2回目接種から最低3か月以上の間隔をおいて接種します。
政府広報オンラインより転載
主な副反応
発生頻度 | サーバリックス (2価) |
ガーダシル (4価) |
シルガード9 (9価) |
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50%以上 | 注射部位の痛み・赤み・腫れ、疲労感 | 注射部位の痛み | 注射部位の痛み |
10~50%未満 | かゆみ、腹痛、筋痛・関節痛、頭痛 など | 注射部位の赤み・腫れ | 注射部位の腫れ・赤み、頭痛 |
1~10%未満 | じんましん、めまい、発熱 など | 頭痛、注射部位のかゆみ、発熱 | 浮動性めまい、悪心、下痢、注射部位のかゆみ・内出血、発熱、疲労 など |
1%未満 | 注射部位の知覚異常、しびれ感、全身の脱力 | 下痢、腹痛、四肢痛、筋骨格硬直、注射部位の硬結(しこり)・出血・不快感、倦怠感など | 嘔吐、腹痛、筋肉痛、関節痛、注射部位の出血・血腫・硬結(しこり)、倦怠感 など |
頻度不明 | 四肢痛、失神、リンパ節症 など | 失神、嘔吐、関節痛、筋肉痛、疲労 など | 感覚鈍麻、失神、四肢痛 など |
まれに、呼吸困難やじんましん等の重いアレルギー症状(アナフィラキシー)、手足の力が入りにくい等の神経系の症状(ギラン・バレー症候群)、頭痛・嘔吐・意識低下(急性散在性脳脊髄炎)が起こることがあります。因果関係があるかどうかわからないものや接種後短期間で回復した症状も含め、子宮頸がん予防ワクチン接種後に生じた症状として報告されたものは、接種1万人あたり、2価又は4価ワクチンで約9人、9価ワクチンで約8人です。このうち、報告した医師や企業が重篤と判断したものは、接種1万人あたり、2価又は4価ワクチンでは約5人、9価ワクチンでは約7人です。
出典:厚生労働省作成リーフレット
インフルエンザワクチン
インフルエンザは、予防接種をすることである程度発症を予防でき、発症した場合でも症状を軽くする効果があります。予防接種をしていなくても、インフルエンザ発症後1週間程度で多くの方は軽快しますが、まれに肺炎や脳症等へ重症化し亡くなることもある怖い病気です。もともと基礎疾患をお持ちの方や高齢者などでより重症化の確率が高いといわれています。ワクチン接種をすることでこれらの重症化も予防効果があります。
日本国内においてインフルエンザは12月~3月頃に流行し、ピークは1月~2月であり、横浜でも流行時期は同じと考えられます。インフルエンザワクチンの効果は約5カ月といわれており、ワクチン接種の効果があらわれるのに2週間程度かかるため、遅くとも12月上旬までにワクチン接種を終えることが望ましいと考えられます。また、インフルエンザウイルスは毎年変化しながら流行するため、日本の場合は国立感染症研究所で次に流行すると予測されたA型2種類、B型2種類の4つの株が入った4価ワクチンが製造されます。一般的には、65歳以上の方は毎年1回の接種で効果があります。
料金 | 3,300円(税込)※ |
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※下記に該当する方は自己負担額2,300円になります。
1.65歳以上の方
2.60歳以上65歳未満の方で、心臓、じん臓、呼吸器の機能、又はヒト免疫不全ウイルスにより免疫機能に1級相当の障害のある方
新型コロナウイルスワクチン
【定期接種実施期間】
2024年(令和6年)10月1日~2025年(令和7年)1月31日
【対象者】
横浜市内に住民登録があり、下記の1、2いずれかに該当する方1.65歳以上の方
2.60歳以上65歳未満の方で、心臓、じん臓、呼吸器の機能、又はヒト免疫不全ウイルスにより免疫機能に1級相当の障害(障害者手帳や診断書の確認)のある方
【接種費用】3,000円
※1.次のいずれかに該当する方は、所定の書類をご用意いただくことにより接種費用免除となります。ただし、支払い後の接種費用払い戻しはできません。 ・ご本人を含む同じ世帯の方全員が市民税非課税の方 ・生活保護を受けている方(生活扶助基準の見直しにより保護廃止となった方を含む) ・中国残留邦人等の方で、支援給付を受けている方※2.実施期間外では3,000円又は無料で接種を受けることはできませんのでご注意ください。
※3.1回の接種のみ公費となり、2回目の接種は全額自己負担(当院では税込16,500円)となります。 その他、詳細につきましては横浜市HPをご参照下さい。 横浜市HPはこちら
【任意接種費用】
・接種費用は、全額自己負担(税込16,500円)となります。
使用ワクチン:当院では、 ・コミナティ(ファイザー社製、mRNAワクチン、オミクロン株JN.1系統対応) ・ダイチロナ(第一三共社製、mRNAワクチン) ・ヌバキソビッド(武田薬品、不活化ワクチン) を取り扱っております。いずれも国の審議会等で、有効性や安全性を確認した上で薬事承認されたものです。ワクチン株の種類としては、いずれもJN.1系統及びその下位系統へのより高い中和抗体を誘導する抗原を含むとされています。
B型肝炎ワクチン
- B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスが血液や、性交渉などを介して感染して起こる肝臓の病気です。B型肝炎ウイルスは体外でも、少なくとも7日間生存することができます。
- B型肝炎が持続すると慢性肝炎から肝硬変、さらには肝がん(肝細胞癌)へと進展する可能性があります。
- 予防接種により発症を防ぐことが期待できます。
- 成人のB型肝炎ワクチン接種は、「初回・1か月後・6か月後」の3回接種が基本です。B型肝炎ワクチンの添付文書では「1回目の接種から139日以上あけていれば3回目接種可能」とされており、ワクチンの効果の持続性などから20週~24週のあいだに接種することを推奨されています。
B型肝炎ワクチン接種が推奨される方
- 医療関係者
- 医療以外で血液や血液製剤にさらされる可能性のある方
- B型肝炎の方と性的パートナーの方や同居家族
- 複数の性的パートナーをもつ方
- 頻繁に輸血や血液製剤を投与する必要がある方、透析患者・臓器移植を受けた方
費用
ヘプタバックス | 1回5,500円(税込) |
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ビームゲン | 1回5,500円(税込) |
A型肝炎ワクチン
- A型肝炎とは、A型肝炎ウイルスの感染により起こる肝疾患です。A型肝炎ウイルスに汚染された水や食物(カキなど)を飲食することで感染します。また、感染している人の便や唾液からも感染します。東南アジアなどの流行域への旅行の際にうつることもあるので注意が必要です。
- A型肝炎ウイルスに感染すると、約1か月の潜伏期間の後に、発熱や倦怠感と黄疸(おうだん)があらわれて発症します。多くは数週間くらいの入院で後遺症もなく治ります。気がつかない程度に軽いこともありますが、劇症肝炎といって命にかかわることもあります。
A型肝炎ワクチン接種が推奨される方
- A型肝炎ウイルスの流行地域を旅行または仕事で訪れる方
- 仕事でウイルスにさらされるリスクがある方(医療従事者など)
- 性行為をする方(特に男性同性愛者)
- 基礎疾患に慢性肝疾患をお持ちの方など
国産ワクチン(エイムゲン®)は3回の接種でほぼ100%の抗体獲得が期待できます。3回(初回、2回目:2-4週間後、3回目:24週間後)接種するとその後約5年は効果が持続しますが、その後抗体価がさがるため、感染リスクが継続する場合は 10-20年ごとの追加接種(1回)が推奨されます。
費用
エイムゲン | 1回7,700円(税込) |
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